オーセンティックな英語の学習ってなにそれおいしいの?




最近、外国語の学習において「オーセンティックな教材を使おう!」なんてことがよく言われています。少し聞き慣れない言葉ですが、このオーセンティックって一体何でしょうか?

オーセンティックとは、日本語では「真正な」などと訳されますが、「真正な」って単語は普段あまり使わないので、なんだかイメージしにくいですよね。あるいは、「本物の」と言ったほうが分かりやすいかもしれません。

つまり、言葉の学習という分野においては「本物の、実際の場面で使われる」という意味になります。

オーセンティックな外国語の学習って何?

ん?じゃあ本物じゃない場面で使われることばって何?ってことになりますが、ではここで中学生の時に使ってた英語の教科書を思い出してください。こんな例文ありませんでしたか?

“Is it Kevin’s pen?” “Yes, it is Kevin’s pen.”

“Does he like playing the guitar?” “No, he does not like playing the guitar.”

みたいなやつです。典型的な文法練習ですね。

でも、これを普段使う日本語に置き換えて考えてみてください。

実際こんな会話をする場面ってありますか?っていうか、Kevinってどこの誰

ことばの学習におけるこんな違和感から、「もっと実際に使われる会話の場面に位置づけてことばを学ぶべき」っていう立場から出てきたのが、「オーセンティック」な外国語学習観です。

つまり、意図的に作成した教材ではなく、 現実に存在する場面、実際にネイティブの人達が行っている会話を参考にできるドラマや映画、ニュースなどを使った教材を「オーセンティックな教材」と言います。一般的なテキストに示されているよりも自然な文章と自然な会話を習得することが目的です。

オーセンティックな言葉を学ぶ必要性

私は大学学部生のときにアメリカに留学したのですが、中学高校と一般的な教科書で勉強してきた私は、最初大きなショックを受けました。なんか「みんなめっちゃよく使ってるのに、意味わかんない」っていう単語がたくさんあるんです。

例えばこんなもの。

  • “How come?”

→ 「どうやって来たの?ってなんやねん」って思いましたね。これ、「どうして?」っていうwhyの意味で使われるんですが、一語で使う場合、whyではなくhow comeの方がよく使われたりするんですよね。全然知らなかったよ・・・。

  • “weird”

→ 「ウィアードウィアードってみんなめっちゃいうけどなんやねん」。聞いてみたら、strangeの意味だとか。日常会話で「何か変~」「あのひとアタマおかしい」とか言う場合には、strangeじゃなくてweirdが使われるんです。

こんな風に、実際にネイティブが日常生活でよく使う単語や表現、よく使われる言い回しに関しては、テキストベースで学習するには限界があるってことを痛感しました。

逆に、日本語を話す外国人の人と話していて、「うーん、文法は間違ってないけど、日本人はそう使わないんだよなぁ・・・」ということがあるのも同様のケースです。

外国語を学ぶなら、せっかくなら「生の言葉」を話せるようになりたいですよね。

オーセンティックな教材で学ぶと何かいいことあるの?

こんな研究があるよ

日本人の大学2年生を対象にして、生教材を使用した場合と通常のテキストを使用した場合の2グループに分けて、コミュニケーション能力を比較した研究があります。

使われた生教材というのは、映画、ドキュメンタリー、リアリティショー、TVのコメディ番組、ネット上の資料、ネイティブが作ったホームビデオ、小説、新聞記事です。これらが、10ヶ月間(大学の前期と後期)週2回の授業で使われました。

これによると、8つの評価項目のうち5つの項目において、オーセンティックな教材を使った方が優れていた、という結果。その効果が出たというのが、発音とか、会話の管理能力とか、ボディランゲージとかなんですが、うん、まあそれは分かる。だって、ネイティブの発音とか対話の仕方を頭に入れるからでしょう?

語彙力も増えるだと?

でも、私が意外だと思ったのが、オーセンティックな教材で学習したグループの方が、「語彙の理解」において格段に差がでた、ということ。つまり、教科書ベースで学ぶより、生教材を使った方が語彙力もアップする、ということなんです。

その理由として、

  • 教材より語彙のインプットが豊かになり、接する語彙の数とバリエーションが広がるため、新しい単語に接する機会が増えること
  • 音声教材による方がその語彙が文脈の中で学習者に提示されるため、結果として習得されやすい。
  • 生教材の方がテキストよりも学ぶ意欲が上がり、学習自体にコミットされやすい

ということが挙げられていました。

参考:Gilmore, A. (2011). “I prefer not text”: Developing Japanese learners’ communicative competence with authentic materials. Language Learning 61/3: 786-819.

まとめ

「オーセンティックって何それおいしいの?」というタイトルでしたが、「おいしい」ってことですよね。

PCやスマホ、タブレットの普及によって、外国のドラマ、映画が簡単に見られるようになりました。それによって、時間と場所を選ばずに英語をスキルアップできるなら、使わない手はないです。

私は最近、ツイッターで英語圏の人達がつぶやいている英語をよく読むようにしているのですが、まあ難しい。

ツイッターなんて言葉数が少ないから、その人の本心を理解するためにまさに行間を読むみたいなスキルが必要ですが(まじめか)、だからこそ分かるんだけど分かんないみたいな。どっちだ。

でも今まさにネイティブによって使われてる表現は、こういった生の英語からしか学べないんですよね。

記事に書いたように、生教材の方が語彙が身につけやすい!という研究結果があるのであれば、少々難しくてもなるべく生の英語に接する時間を増やして行きたいと思うのです。




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